アブ・シンベル大神殿 

 

バスを降りてしばらく歩くと小高いが見てきた。この丘に近づくに従って少しずつこの丘の表面に掘られた巨像が見えてくる。ギザのスフィンクスを目にした時には得られなかった感動を受ける。この感動が私がエジプトに求めたものに近い。
大神殿はラムセス2世がヌビア地方の中心アブ・シンベルに自分の力を象徴するものとして建設し、その後に戦争の神アメン神に捧げたと考えられている。
ここから見える小山は人工のコンクリート製半ドームの上に砂を被せたものである。

 

 

世界的に有名になったのは、35年前のナセル大統領時代にアスワン南部に大きなダムを建設し始めた時、ダムの水位が高くなるとヌビア地方が完全に沈む事がわかり、ヌビア地方に残っている遺跡を全て保存する必要が発生し、ユネスコ機関の協力の下に大神殿・小神殿とそれ以外にも14箇所の遺跡を安全な高い場所に移す大プロジェクトが結成された事である。大神殿は1964年〜1968年の間にここより40m程低い場所から1,038個のブロックに切断され、新しく造られたコンクリートの半ドームの中に移され、元と同じ状態に復元された。

 

猿は夜と知恵の神様として崇拝されたので、夜にこの神殿を守るようにと一番上には幾つもの小さな猿の像が刻まれている。

 

4体の石像の内、左から2番目の像は上半身が落ちてしまい、壊れた部分は台座の前に置いてある。

 

真ん中の入り口上部には太陽神ラーの像(隼の頭と男性の身体)が刻まれて、その左右でラムセス2世が手を挙げ神様に祈っている彫刻も見られる。

 

二重冠を被りあご付けひげを付けた王は両手を膝の上に載せ玉座に座っている。

 

4体のラムセス2世像はそれぞれ表情が異なっている。

  

 

即位名と誕生名が象形文字で書かれたカルトゥーシュが腕や足の間に描かれている。

 

 

 

神殿の中に入ると綺麗な壁画と模様が彫られている。最初の大列柱室には2列8本の柱が並んでいる。ラムセス2世は死んでから神様になると信じていたから柱の表側には、両手を胸の所で組んだポーズのオシリス神の姿で自分の像を現している。

 

オシリス柱

 

 

 

 

左右の壁にはラムセス2世が起こしたカデシュ(シリアで起こったヒッタイト民族との戦い)と言う有名な戦いの戦闘場面が描かれている。

  

中でも戦車の上に乗って弓を引いて敵を殺している姿のレリーフは有名である。

 

更に奥の前室には4本の柱があり、ラー神に捧物をするラムセス2世のレリーフが描かれている。

  

 

  

 

   

  

側室の内部はかなり暗く、フラッシュ無しの手持ち撮影はかなり苦労する。

 

側室のレリーフ

  

 

側室のレリーフ

 

一番奥の至聖所には左から、プタハ神、アモン・ラー神、ラムセス2世、ラーホルアクティ神の4体の像が並んでいる。ラムセス2世の像が神様と同じ高さで神様の間に配置されているのは、亡くなってから神になると信じたからである。ここでは、王が生まれた日と即位した日(2月20日と10月20日)だけ、日の出の時に太陽光が届き、ラムセス2世と隣の2人の神だけを照らす不思議な現象が起っている。これは当時の高度な天文学的技術でこの神殿が建設されたことを示している。