ハトシェプスト女王葬祭殿 

広い駐車場から葬祭殿までは700m位離れているがこの炎天下の中を歩いて行かねばならない。余りにも暑いので腕時計の温度センサーで計測してみるが42℃しか表示しない。そんなはずはないと思い、アルコール温度計のキーホルダーを下げていた人に尋ねると、最大計測範囲の50℃をオーバーして真っ赤々であり今にも破裂しそうな状態であった(後から聞いた話ではこの日の最高温度は実に55℃と信じられない気温であった)。
こんな高温下によく身体が持っているなと感心しながらも歩き続けた。少し歩くと道の右側に土産店が並んでおり店員がなにやら声を掛けてくるがそれに耳を傾ける余裕など無い。早く日陰のある場所に行きたいのだが、砂漠の中では樹木一本立ってはいない。拭く前に汗は乾いてしまう不思議な状態である。葬祭殿の直ぐ下まで舗装道路が続いているのだからバスの乗り入れをさせても良いと思うのだが。

 

 

葬祭殿は切り立った断崖を背にして建てられており、こんな処で銃を持った過激派に追われたら逃げ場など無い。ここで1997年に日本人観光客が銃弾の的にされたのは未だ記憶に残る事件であるが、その場をこうして自分が訪れてみると袋小路で逃げ場を失い虐殺された人々の痛ましさが身近に感じられ足取りは重くなる。

  

ここは3450年前に自分の埋葬儀式を行うために作らせた珍しい3段テラス様式の葬祭殿で、3階は今年4月から一般観光が出来るようになった。
ハトシェプスト女王は父(トトメス2世)が亡くなったとき、女性だったので即位できなかったが、腹違いの弟(トトメス3世)の代わりに政権を握って22年ほどエジプトを統治し、その時代は大変平和であった。彼女は結婚せずに1人でエジプトを統治して儀式などにはあご付けヒゲを付けスカートもはいて男性の格好をしたとても珍しい女王だったと言われている。また、生きている間に王家の谷に大きなお墓を岩窟した。

 

ここからはルクソールの街が綺麗に見える。昔はカルナック神殿の高い塔門やオベリスクがここから見えた。今も晴れていれば見えるらしい。

 

第2テラスに上がり右奥に行くとアヌビス神の礼拝所があり、そこには未だ奇異なレリーフが残っている。

 

 

 

天井は空色に塗られ星模様で飾られており今でもその色彩は少し残っている。

  

周りの壁には神と女神様の姿が綺麗に描かれている。アヌビス神は山犬の頭と男性の身体で現され、右手に天国の鍵を握っておりミイラ作りの神様として崇拝された。

 

勇壮な隼像が両脇に置かれた階段を上がると3階に出る。

  

3階からの眺めは素晴らしく、この葬祭神殿がU字状の谷間に建てられている事や、まだ周辺は発掘復元中であることなども分かる。

 

正面に修復跡の新しいオシリス柱が沢山並んでいる

 

このオリス柱の間の通路を進むと第3テラスに出る。

  

オリス柱

 

直ぐ後ろは断崖に取り囲まれ威圧を感じる。その中に不完全な形で復元された列柱が幾つか立ち並ぶ。

 

 

 

ハトシェプスト女王の姿はここに沢山描かれていたが、彼女の急死後、腹違いの弟が後を継いだ時、彼女の名前の入ったカルトゥーシュや彼女の姿のレリーフを全て消した。

 

 

 

更に岩窟至聖所へ通じる門が見えるがここは立ち入ることが出来ない。